トレーラーハウスを支えるシャーシの基本知識

移動可能な居住空間として注目されているトレーラーハウス。地面に固定された建築物と同等の快適な空間を作ることができますが、分類としては牽引車に牽引されて道路を走行するため「被けん引自動車」の扱いとなります。そんなトレーラーハウスを検討するうえで見落とされがちなのが、居住空間の下にある「シャーシ」です。
シャーシは、走行時の安全性を左右する重要な要素でありながら、その仕組みや選び方が十分に理解されないままになっているケースも少なくありません。この記事では、トレーラーハウスに用いられるシャーシの基礎知識から選び方、知っておきたい法律までわかりやすく解説します。
シャーシの基本知識
シャーシとは何か
トレーラーハウスにおけるシャーシとは、簡単に言うとトレーラーハウスの“土台”や“台座”に相当する部分です。上部に乗る居住空間(上物)をしっかりと支え、走行時の振動や衝撃、重量を受け止める「骨格」の役割を担っています。もともとはフランス語の「châssis」に由来し、窓枠や額縁などの“枠組み”を意味する言葉が転じて、自動車分野では“車体を支えるフレーム”として定着しました。
多くの乗用車はフレームとボディが一体化したモノコック構造ですが、トレーラーハウスのシャーシは、ラダーフレームのように頑丈なフレーム構造が独立して存在し、その上に居住スペースを載せる形になります。ブレーキや車軸(タイヤ)などの走行に欠かせない部品も取り付けられているため、トレーラーハウスを安全に牽引・移動するうえで欠かせない“基盤”となるわけです。
コンテナ輸送用シャーシとの共通点コンテナ輸送用シャーシとの違い
トレーラーハウス用シャーシとコンテナ輸送用シャーシは、ともにエンジンを持たない被けん引車という点で共通しています。しかし、目的や法的区分が異なるため、構造や費用には様々な違いがあります。
主に、以下のような点で違いが見られます。
- コスト:個別設計のトレーラーハウス用は割高、規格化された輸送用は大量生産で安価になりやすい
- 用途:居住空間(トレーラーハウス)と貨物輸送(コンテナ)
- 法定重量:3.5 t以下(O2)と大型区分(O3~)
詳しくはこちらの記事をご覧ください。
トレーラーハウス用シャーシの区分
被けん引自動車の4種類
トレーラーハウス用シャーシが含まれる「被けん引自動車」は、さらに車両総重量に応じて次の4つに分類されます。
- O1:車両総重量が0.75 t以下
- O2:車両総重量が0.75 tを超え3.5 t以下
- O3:車両総重量が3.5 tを超え10 t以下
- O4:車両総重量が10 tを超える
この中で、トレーラーハウス用シャーシとして多く用いられるのが「O2(オーツー)カテゴリ」です。
O2カテゴリが主流となる理由
O2カテゴリは、車両総重量が3.5 t以下に制限されます。ここで言う「車両総重量」には、シャーシだけでなく居住空間(ハウス部分)を含めた重量も加算される点が大きなポイントです。
たとえば、シャーシの重量が約1 tの場合、その上に載せられるハウス部分の重量は2.5 tまでとなります。これを超えると3.5 tを上回り、O2の範囲を超えてしまうため、O3以上のカテゴリになってしまいます。
車両総重量と最大積載量
- 車両総重量
シャーシ重量と積載物重量(トレーラーハウス部分)を合計したもの。O2カテゴリでは最大3.5 tです。 - 最大積載量
車両総重量(3.5 t)から完成したトレーラーハウス(シャーシ重量+居住スペースの重量)を差し引いた値です。この値を超えて物を積んで走行すると、道路交通法上「過積載」となり、重大事故や道路損傷の原因になります。
重量超過のリスク
O2カテゴリ以上(O3やO4)にすることで重量制限が緩和され、より重いハウス部分を製作できる魅力はあります。しかし、それには大きなデメリットも伴います。圧力式ブレーキを搭載しなければならないなどのコスト面や、牽引車が大型トラクタに限定される点が挙げられ、一般ユーザーにとっては使い勝手が悪いのです。結果的にO2カテゴリのシャーシが選ばれることが多くなります。
O3以上のカテゴリが不向きな理由
エアブレーキへの対応コスト
O3以上のカテゴリになると、より強力な制動装置であるエアブレーキ(圧力式ブレーキ)の搭載が義務付けられます。エアブレーキシステムは構造が複雑で高コストなため、シャーシ自体の製作費が跳ね上がってしまいます。
大型トラクタのみが牽引可能
圧力式ブレーキを使用するトレーラーハウスは、相応のブレーキシステムが備わった牽引車(大型トラクタなど)でなければ走行できません。一般的な乗用車では牽引できないため、実際に利用できる人が非常に限られてしまうのです。
シャーシ選定のポイント
車両総重量と最大積載量の明示
購入を検討する際は、シャーシそのものの重量が明確に示されているか、そして最大積載量がどの程度なのかを必ず確認しましょう。
- シャーシ重量とハウス部分の重量を合計しても3.5 tを超えないか
- メーカーや販売店が正しく重量情報を開示しているか
この点を曖昧にしている製品は避けたほうが無難です。
制動装置の安全性
被けん引車であるトレーラーハウスにとって、ブレーキ性能は極めて重要です。O2カテゴリでは、電磁ブレーキや慣性式ブレーキを使う製品が主流ですが、しっかりと安全性を証明できるシステムが採用されているかを確認することが必須です。
車検付き(ナンバープレート付き)の利点
シャーシに車検(ナンバープレート)が付いていると、法的に「自動車」として取り扱われます。
- ブレーキ性能や灯火装置などの安全性が車検場で検査される
- トレーラーハウスが建築物かどうかという議論になりにくい
法的問題や安全基準のクリアが明確になるため、安心して全国で利用できます。
まとめ
トレーラーハウスの基礎部分を担うシャーシは、住宅の「土台」に相当する重要な存在です。法律が定める重量制限やブレーキ性能をしっかり理解し、正規の車検取得が可能なシャーシを選ぶことで、知らぬ間に違法状態に陥るリスクを避けられます。
最適なシャーシを選定し、安全に走行できるトレーラーハウスを手に入れれば、その活用の幅は大きく広がるでしょう。快適かつ安心して利用できるトレーラーハウスを目指すためにも、シャーシの選び方は慎重に検討してみてください。